松戸市、市川市、宮大工が手掛ける古民家再生・注文住宅の工匠です。
皆さんこんにちは。
大工さんが使う「番付け」という言葉をご存じでしょうか?
図面を見て、どの材料をどこに配置し建物を造るかを決め、棟梁が木材に印をつけていく作業です。これがなければ建物はできません。
「一、弐、参・・・・」「いろはに・・・・」とマークしていきます。その時、木材一つ一つを見て、反りやねじれなどの癖を見極めていきます。建物になってからも多少の動きを生じてしまう無垢材ですから、どのように材が動いてくるかを読み取って、適材適所に使用する場所を決めていくという、とても重要な作業です。
▲時には図面に合わせてアルファベットで番付けしたりするときもあるそうです。
現場で誰が見ても、すぐにわかるようにしておいた方がいいかな?という棟梁の考えです。
番付けの時には、使う材料の向きまで決めますから、棟梁の材料の持っていきようで建物の強さが変わってくる、ということになります。入ってくる木材のコンディションも色々ですから、豊富な経験と確かな目利きが必要です。
その後、木組みをしていくための加工の印を書き込んでいきます。一本一本の木が次々と組み合わさって、建物になる様子を棟梁は頭の中で立体に描き、どうしたら一番よい組み方になるのかを考えて、間違えのないように墨付けしていきます。平面の図面から立体を描き、どのような刻みにするか加工方法を記入するのです。
こうして墨付けが終わった材料は、他の大工が見ても加工できるようになっていますから、若い大工達も墨付けに従って作業を進めることができます。複雑で精密に考えられた加工指示です。この加工を間違えてしまっても建物は建ちません。丁寧にきちんと作業が進められています。
こうした加工に真剣に取り組むことで、棟梁たちの考えや技が若い大工達へ伝承されていくのだと思います。
棟梁は墨付けを始める時、頭の中で材料が宙をうくように動いて、立体的に組みあがっていくそうですよ。VRみたいですね。
▲工場内で仮組をするものもあります。
構造が組みあがるまでは、現場で狂いが出ないようにと細かなところまで考えと計算を巡らせます。棟梁は、常に重圧の中にいます。墨付けは意外と孤独。でも、嫌いじゃないけどと棟梁は話していました。
手刻みの建物には、棟梁の考え、技と誇り、想いがたくさん込められています。そして、その想いと技は、強くしなやかで美しい建造物となって後世へ残っていきます。
棟梁の許しなく現場で柱などを入れ替えて使ったりしては絶対にいけません。
大工としての一つの大きな目標でもある棟梁は、文字がかけなきゃならん!しかも、かっこよく書きなさいってこともありまして、工匠の書道の師範が手本を書いてくださいました。
半紙に優しく書かれたこの文字の美しさ。赤ペンで注意するポイントまで書きこまれた丁寧で愛情たっぷりのお手本です。
墨付けに使用する昔ながらの道具は、木目のある表面に墨で、竹でできた固いへらのようなも(墨差し)でした。
▲これは矢立というもので、携帯用の筆入れです。
先にあるのが墨入れ、柄のところに筆を収納します。
墨差しで木材に書いてみます。これは、先生でも大苦戦。
でも、墨差しの持ち手の美しさは見習うべきところです。
固い墨差しを木材に押し付けるように力を入れながら書くので、ひらがなのカーブが書けない!
私も挑戦させてもらいましたが、とーっても書きにくかったです。
今もその道具を使う棟梁もいます。筆ペンを使う棟梁や、太い油性ペンを使っていたりと色々。
加工の墨付けには、なんともいいペンが登場したそうで、それぞれ好みの太さの芯を使っているそうです。
若い大工さん達がいつか棟梁になって、初めて墨付けをする日。みんなが一つの目標にしているその日が来ることがとっても楽しみです。プレッシャーと戦いながら過ごすことになるのだと思いますが、負けないで頑張ってほしいです。
師範の字に習い、美しい番付けができるようになったら、棟梁として更にかっこいい。墨で書かれた番付けは、築100年の古民家生の時にも材にしっかり残っているそうです。
今の棟梁の建物が改築、修繕される例えば100年後。後世の大工が「おっ!さすが昔の人は字がうまい。」なんて話しているところを想像すると面白いです。
大工の技術だけでなく、番付けの文字にまでこだわりをみせちゃう工匠の話しでした。
松戸市に本社工場を構える工匠では、今日も大工が木と向き合っています。
聞けば聞くほど、知れば知るほど、本当にどこまでも深い宮大工さんの世界。ちょっとずづ切り取りながら、レポートしていきたいと思います。
古民家再生を行い、私たちらしい暮らしを叶えたい。
他社で診てもらったら「建て替えた方が」と勧められたが、本当にそうなのか?
予算や間取りなど相談したい。