メニューを開く

メガメニュー を開く

メガメニュー を閉じる

  • icon

    TEL:047-712-1305TEL:047-712-1305

    受付時間 8:00~18:00

  • icon

    お問い合わせメールフォーム

    24時間受付中

2025/02/27

家づくり学

坪庭とは。メリット・デメリット。ー坪庭で家族を想うー

坪庭とは。メリット・デメリット。ー坪庭で家族を想うー

松戸市、市川市、宮大工が手掛ける古民家再生・注文住宅の工匠、広報担当です。
 

皆様こんにちは。

坪庭と聞くとどんな空間が思い浮かびますか? 家に坪庭あるという方や知人宅にあったという方もいるかもしれません。また、旅館や料亭の坪庭を思い浮かべる方も多いかもしれません。茶道の心得のある方は、露地という茶庭を通って茶室に入るのかもしれません。坪庭は、部屋や廊下に挟まれるように造る小さな庭の事です。もし、自分の家に坪庭があったらどのような世界を創るでしょうか? 自宅にあったら素敵だなってちょっと憧れます。

坪庭のルーツは、貴族によって多くの日本文化が生まれた平安時代にあるとされています。今回は、現代にまで残る坪庭の魅力をご紹介したいと思います。
 


≪目次≫

 

○坪庭とは

○坪庭のルーツ

○京の町家での坪庭の役割


○坪庭のメリット

 ・明るく開放感がある
 ・通気性アップ
 ・家の中から自然を味わう
 ・非日常の演出
 ・家族とのコミュニケーションが増える
 

○坪庭のデメリット

 ・建築費が上がる
 ・窓の増加への対策
 ・床面積が狭くなる
 ・メンテナンス
 

○まとめ
 

  

坪庭とは?

現在の坪庭とは、部屋と廊下、垣根などに囲まれた小さな外空間の事を言います。
中庭よりも小さなイメージで、多用途に作られた庭というよりは植栽したり石を置いたり思い思いの演出で、家の中からでも季節や自然を感じることができる、観賞することが主な目的の庭という感じです。原型となっているのは、京の町家に見られる間口から裏へ長い家の途中に作られた小さな庭です。
 

坪庭のルーツ

「坪庭」の言葉のルーツは、平安時代に確立した寝殿造り(位の高い貴族の住宅形式)にあります。寝殿造りは母屋(寝殿)を中心にいくつかの建物でできています。その建物同士は渡り廊下でつながっていました。建物と渡り廊下の間のスペースは、四角い外空間になります。その場所を「壺」といいます。そこには桜、藤や紅葉、草花などが植栽され、石が置かれ、水が流れていました。四季と自然を感じられるように造られた「壺」は、そこに住む人たちや仕える人々を癒していたのです。この壺が坪と変化したと考えられます。平安時代の「壺」は、とても広大でしたから現在の坪庭とはスケールが違います。

鎌倉時代、室町時代には寺院に「壺」のような空間ができ、自然の風景を模した枯山水などが生れました。日本人はいつも自然に癒され生かされている。自然と共でなければ生きていけないという精神をもっています。自然を模した日本の庭文化は、どのような時代も途切れることなく受け継がれてきたのだと思います。
桃山時代には茶庭(露地)という茶室に入る前の通路に庭が作られました。千利休が確立したこの露地には茶事への気持ちを創るため、いくつかの決まりと作法があります。茶室と露地は一体となって侘びの世界を創り上げていました。侘びの心と庭づくりのエッセンスは京の町家に設けられた小さな庭へ反映されました。家の主人のセンスと教養が盛り込まれたアイディア豊かな小さな空間は「坪庭」という、今に継がれる文化を育んだのです。

白砂に石、水が入った蹲踞(つくばい)と石灯籠、飛び石に季節の草花や樹木、苔。茶道に詳しくなくても、「日本庭園」と言われて想い浮かぶ庭は皆さんだいたい共通のイメージではないでしょうか。静かで心落ち着く和の空間です。これらのものを小さな空間に絶妙に配置し、美しい景色を作っていました。


 

▲蹲踞(つくばい)            ▲石灯籠

 

▲飛び石

京の町家での坪庭の役割

京の庶民に根付いた坪庭には、観賞用ではない機能がありました。

桃山時代、京都再興ため人々は商業活動を始めました。職住一体の住居が肩を並べるように建ち並びました。誰もが通り沿いに店を構えるため住居部分が間口から奥側へと長細い建物となっています。「うなぎの寝床」と言われる京の町家造りです。坪庭は、町家の奥へ続く通路の途中に設けられ、採光と空気の流れを確保する役割を担った大切な空間でした。家の住環境のために必要不可欠だった空間です。しかし、日本人の自然と共にあるという精神は、この小さな外空間を機能性だけの場所にしませんでした。自然を縮小して描き眺めて楽しむという要素を加えていったのです。平安時代貴族たちも癒されてきた「壺」の世界観と想いに、スケールは違えど通ずるものがあります。
そして坪庭は、一つの作品のように切り取られ、今に繋がっています。現代の坪庭は、モダンなものや洋風なものなど日本庭園の要素にこだわらずたくさんのデザインがあります。住まいのイメージに合わせて創る癒しの空間となっています。


では、坪庭にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

坪庭のメリット

明るく開放感がある

京の町家の悩みを解決させた一つには、採光があります。奥まるにつれ暗くなってしまった長い住居に坪庭は、明るさをもたらしたのです。現代の家も敷地の状況で採光が確保しずらくなってしまう事もあるのではないでしょうか。そんな時は少しだけ床面積が狭くなっても坪庭を造るという選択があります。狭めたはずの屋内が明るさと開放感を得て、逆に広さを感じることができるようになります。
 

通気性アップ

これも京の町家と同じですが、家全体に空気の流れをつくることができます。今の家は気密性や断熱性、換気にも優れているかもしれません。でもやはり、スーッと外の自然な風が家の中を一巡りするのは気持ちがいいし、健康的です。日本には外の風を感じたいと思う季節がありますから。
一日のうちで一回でも、風が抜けていく時間がある。その環境を作ってくれる坪庭には、リラックスと癒しの効果がありそうです。

家の中から自然を味わう

四季を感じられる植栽をして、水を張り石を置き苔を巡らせて、小さな空間に大自然を描くことができる坪庭。たとえ表側に大きな庭がなくても、坪庭に自然を上手く描いたら、家の中から外を味わえるとても贅沢な空間になります。基本的に坪庭は囲まれた空間ですから、視線を気にすることなくプライバシーも守られたまま外を愉しむことができます。一日中家の中にいた日も、在宅ワークに疲れた日も、坪庭から季節の花を見て、風を感じる。陽の光を浴びて、夜は月を眺めることができます。

非日常の演出

本来なら戸やカーテンを閉め切って、見えなくなってしまう事が多い夜の庭です。でも坪庭なら、いつまでもガラスの向こうに美しい自然を感じていられる。ライトアップして食事したり、お酒を飲んだり、お風呂から見えるように坪庭を配置する間取りもあるでしょう。視線を気にせずに安全にそんな時間をたっぷり楽しめるのは、坪庭ならではです。家にいながら、料亭や旅館にいるような非日常を演出できます。

家族とのコミュニケーションが増える

間取り次第では、坪庭の向こう側にいる家族の気配を感じやすくなります。季節ごとに変わる坪庭の表情、草花や天気の変化、遊びにきた鳥や蝶は、家族にたくさんの話題を運んできます。


視線を気にせず気軽にできる庭いじり、広すぎない坪庭での作業は長く続けられる趣味にも繋がりそうですね。家族とのDIYでつくる庭も、楽しい時間と思い出になります。


 

坪庭のデメリット

建築費が上がる

坪庭のスペースをコの字型、又はロの字型に造ることで外壁が増え、窓も増えて建築のコストが上がる場合が多いです。坪庭の使い方によっても、整えるべき外構設備があるので、完全に後回しにせずに建物の建築予算に組み込んで設計する必要があります。

窓の増加への対策

坪庭を造ると、それを眺めるための窓が増えます。また、外への出入り口を作ることも多いと思います。気密性、断熱性を重視した構造が主流の現代では、窓など開口部への対策が必要です。窓のお掃除も増えますね。


床面積が狭くなる

家の一部を外にしてしまうと考えると、床面積が小さくなるということになります。坪庭の分、建物を外側に広げるなど工夫ができる場合は対処できるかもしれませんが、基本的には坪庭によって広く感じる明るく開放的に感じるといったメリットの方をどれだけ活かす間取りにできるのかを考えて設計することになるでしょう。また、坪庭の上は日差しを感じる空、という設定が多いかと思います。つまり床面積の縮小は2階にも影響するということになります。

メンテナンス

美しい庭をキープするためにはメンテナンスが必要です。眺めるための位置にある坪庭ですから、物置にしたり草をほおっておくと雑多なものを毎日目にする事になってしまいます。植えた樹木の種類によっては、落葉したり、専門業者に剪定をお願いしなければいけないなど、労力やランニングコストがかかる可能性があります。
 

まとめ

「庭屋一如」と提唱された研究家の先生もいらっしゃいます。
庭と建物は一つの如しという意味の造語です。庭と建物の調和を大切に考えることは、自然と共にくらしていかなければ生きられないという古来から日本人の心に途切れることなく残っている心情です。耐震や断熱性、気密性が求められている今日の住宅事情の中で、庭と家は切り離されてしまいがちです。また、庭というスペースが簡単に設けられない土地もあるでしょう。忙しくなった私たちの生活の中で、庭に関心を持つ時間や、そこに費やす労力は確保しずらいものになっています。そんな環境の中で、もしかしたら坪庭は、はるか時を超えて今こそ私たちの暮らしにぴったりな空間なのかもしれません。家族と一緒に変わっていく坪庭の植物、そこで過ごす時間の長さや考える事。手にしている飲み物さえ変わっていくのかもしれません。



でも、坪庭には光が注ぎ、雨が降り、風が吹いている。家族の思い出でも生まれるはずの坪庭。そして、坪庭の存在は変化していく家族の中で、変わらずに家族を想う場所であってくれるはずです。

和の心が育んだ坪庭。古民家再生や新築の際に検討してみてはいかがでしょうか。
 


 



工匠は、千葉県松戸市・市川市を中心に自然素材を活かした古民家再生・注文住宅を手掛けています。
いつまでも丈夫で美しく、愛され続ける住宅をご提供いたします。
古民家再生・家づくりに関するご相談、お悩みなどお気軽にお問合せください。
 

お問い合わせはこちら

© 2024 株式会社工匠 KOUSYOU co.,ltd. |
Created by ABABAI Co.,Ltd.